どうやって病名をつけるのでしょう 7
[2010.11.01]
ヒトは究極の複雑系です。
診断基準で、ある一側面を推測することは出来るかもしれませんが
それだけで推し量れるはずのない存在です。
精神分析では、診断名を付けることを重視しません。
病名は重視しませんが、その人のパーソナリテイの傾向や、人格構造、
どのような防衛機制でもって適応しているのか、等といった側面を重視します。
鬱病なのか、不安障害なのか、双極性障害なのか、
といった病名を付けることよりも、どのような背景でもってその人が人となり、
現在の病気が起こってきたのか、その人の人生の物語を追い、
それを再構成することで理解し、治療していこうとする試みです。
これは、診断基準をあてはめて治療計画を立てることより、
はるかに困難で、職人芸を必要とする、手間のかかる試みです。
そのせいでしょうか、医師となって精神分析を志す人は、
殆どいなくなってしまいました。
これほど応用範囲の広い学問は、そうそうないと思うのですが、
理論が難解すぎるせいなのか、長い修業期間を要するせいなのか、
あるいは指導者が少なすぎるせいなのか、
ほとんどの医師は精神分析をまったく理解しないまま、価値を認めようとせず、
精神分析は日本の精神科医の間でまったく人気がありません。
とても残念なことです。