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世界一

[2011.05.16]

関西方面で開かれたある会合に出席して来ました。

学会や研究会とは趣の異なる集まりで、

長年の親しい友人である料理人S氏の為に催された祝賀会に招かれたのです。



世界中から料理の本を集め、その中でも特に優れたもの400冊を

一堂に集めて評価をするというコンテストがパリで開かれ、パリの審査委員会から

S氏の元へ33日の表彰式に来るようにとの招待状が届いたのは今年の始め…。

食のアカデミー賞といわれる、権威あるコンテストです。


どうせ入賞するのはフランス人かヨーロッパ圏内の人だろうし、

仕事を休んでまで番外の自分が行く必要は無いと、一旦は断ったのだそうですが、

絶対に恥はかかせないから必ずパリまで来るように、との再三のオファーに

「そこまで言うなら3位くらいには入れてくれるのかな・・・」と

半信半疑で13日でパリへ行ってきたのだそうですが・・・

結果はグランプリ、つまり世界一だったのだそうです。


S氏本人は自分の本がノミネートされていることすら知らなかったくらいですから

コネ無し、事前の根回し無しの、完全勝利です。



このコンテストは震災前に行われていますが、

日本語で書かれた日本料理の本がグランプリを受賞すると言うことは

世界が日本に本当に注目していることの表れでしょう。




関西の財界・料理界は大喜びで、S氏のグランプリを祝う集まりが開かれ、

無名時代からのS氏を知る友人として、私も招いて頂きました。



被災されて不自由な生活を強いられていらっしゃる方が多い中、

このような会は中止すべきだと言う意見もあったようですが、

関西から元気になろうということで会を開くことに決め、

関西の財界や料理界の方々が沢山お集まりになられていました。


S氏との出会いは、今から十数年前・・・

仕事で関西へ行くことになったついでに、関西できちんとした食事がしたいと思い

友人のTS氏に相談してみました。


TS氏はソムリエ世界大会優勝経験を持ち、現在は世界ソムリエ協会の会長も務める

食の世界では名の知れた人物です。


TS氏は、名だたる料亭の名前を数件挙げ、気さくに「僕の名前を使ってくれて良いよ」

と仰って、「それとまだ出来たばかりの新しい店だけど、Sという店がとても良いから

行ってみるといい。いつ行くの?今、電話してあげるよ」

TS氏は自ら携帯電話を取り出し、その場で予約をしてくれました。


S氏は、TS氏からの紹介で、しかもTS氏が自ら予約の電話をしてくるなんて、

一体どんな客が現れるのかと、とても緊張していらしたそうです。


今では予約の取れない店としてすっかり有名になったSも、

10年以上前は予約が取りやすかったこともあり、関西方面で仕事がある度にSへ立ち寄り、

すっかり気の置けない友人となりました。


当時、無名だったS氏を最初にマスコミに紹介したのはTS氏だったそうですが、

その直後に私が訪問し、その頃を境に店の評価が上がっていったという経緯があり、

S氏は10数年にわたり、最上級のもてなしをして下さいます。

数年前のある日、どういうわけか予約が重複してしまったことがあり、

「えろうすんまへんな、今日はこちらで勘弁しておくれやす」

と通されたのは何と厨房の中。

普段S氏が、料理の構想を練ったり、料理の味見をしたりする料理人の席でした。


通常、料理人の席に客を通すことはありません。

そこに客を通すということは、とても例外的なことなのです。

チリひとつなく完璧に磨きこまれた厨房の隅で、

料理人たちがきびきびと働く姿を見ながらの食事は、忘れ難い経験となりました。


S氏との面白いエピソードは数え切れないほど沢山あって、

それだけで本が1冊書けそうなくらいですが、

特に思い出深いのは、フランスでオーナーシェフのレストランとしては最も長く、

60年以上にわたって三ツ星を維持しているレストランTの

MT氏をお連れした時のことでしょうか・・・。(この話はいずれまた・・・)


S氏もTS氏も、決して裕福な家庭の出身ではなく、

特別に高度な専門教育を受けた訳でもありません。

自身の感覚と努力を頼りに、自力で現在の道を切り開きいてきた、

言わば叩き上げの職人です。

私はそういう職人タイプの方をとても尊敬していますし、

彼らの心遣いや友情にも深く感謝しています。


今ではやんちゃな従兄弟といった感じのS氏のグランプリ受賞…。

ソムリエ世界一のTS氏から紹介されたS氏が、十数年の時を経て料理本世界一に・・

感無量の1日でした。



そして素敵なご報告を頂きました。

関西の名だたる料亭の主が結集してキッチントラックを数台購入して、

被災地にトラックと料理人を交替で派遣し、

物資が届きにくい様な小さな避難所も含め、被災地全体に料理を届けると言う活動を、

今後、数年、数十年にわたって行っていきながら、災害時にはすぐに料理人と

キッチントラックを現地へ派遣できるようなシステムを構築していく、ということです。


詳細はまたこのブログでご紹介しますので、関心のある方は、

関西料理人のキッチントラックへの御賛同を、お願い致します。


私もキッチントラックに乗せて頂いて、出張往診をしようかな・・・。

被災地の皆様、関西の料亭の味が間もなく届けられるかも知れません。

精神科医の往診付きで・・・。


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