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分子整合医学との出会い

[2015.12.15]

小此木先生との最後の日々、日に日に衰えて行く師の姿を、無力感にさいなまれながら、目の当たりにすることになります。先生の入院していらした病院の医療チームの中には小此木先生のかつての教え子もいて、皆さん誠心誠意治療に尽くして下さいました。でもそれは、とてもとても苦しい治療でした・・・。
小此木先生の受けた治療は、その時の医学の最高水準のものでしたが、しかしそれは患者に大変な苦痛を強いるものだったのです・・・。

木曜日の3時に病室を訪れたものの、小此木先生は話をすることもままならない程弱りきっていらして、何も話をしないまま帰って来たことも何度かありました。
病み苦しんで、弱り衰えていく学問上の父の姿を目の当たりにしながら、私自身が医師でありながら、為す術もなくただ茫然としているだけの毎日が、空しく過ぎて行きました。本当に、何も出来ることがなかったのです・・・。

2003年9月に小此木先生が亡くなられた後も、何故あれ程の人が、あれほどまでに苦しまなければならなかったのだろうか、他に方法は無かったのだろうか・・・
という思いが、ずっと心の中に沈殿していました。
人は誰でも衰える、病を得、やがて死を迎える・・・その事実は変わらなくても、寿命は伸びなくても、苦痛の無い癌治療というものはないのだろうか・・・。
病を抱えながらも死の間際まで穏やかな日々を過ごせる治療法と言うものは無いのだろうか・・・。もしそういう方法があるなら小此木先生に勧めて差し上げたかった・・・。

この疑問に対する答えは、最も身近なところからもたらされました。
小此木先生が最も信頼した医学専門の同時通訳者・北山ユリさんから、高濃度ビタミンC点滴治療の日本の第一人者、柳澤厚生先生を紹介されたのです。
これが私の、高濃度ビタミン治療、分子整合医学との出会いでした。

苦しんで亡くなられた学問上の父である恩師・小此木啓吾先生に、生きていらしたら勧めて差し上げたい治療法として、私はこの古くて新しい医学と出会ったのです。
そして北山ユリさん、柳澤厚生先生を通じて、その分野の日本の第一人者や、マイケル・ジャンスン先生を始め、世界的にも高名な臨床家・研究者たちと知り合うことができました。

苦痛の無い癌治療というものはなかったのだろうか・・・という疑問から入った領域でしたが、始めてみて分ったことなのですが、予想外のことでしたが、これらは精神疾患の治療から発展してきた治療法だったことも分かりました。

カナダの開業医だった精神科医のエイブラム・ホッファー医師の元へ、癌患者さんが鬱状態となって、鬱の治療の為に紹介されてくることが多かったのですが、ホッファー医師はライナス・ポーリング博士の理論に従い、うつ病の治療と並行して高濃度ミタミンC点滴やサプリメントを使った治療を行っていたのです。

その結果ホッファー医師の治療を受けた癌患者さんは、他の医師の治療を受けた場合に比べて、鬱が改善しただけではなく、癌の経過も良く延命効果もあった、ということから、評価され広まってきた治療法だったのです。

理論はライナス・ポーリング博士が構築したものでしたが、精神科医のエイブラム・ホッファー医師という優れた臨床家が出会い、その共同研究から、この学問・臨床は深化・発展してきました。
研究室ではなく、臨床の現場から発展した、文字通り実践的な医療です。

エイブラム・ホッファー医師は、残念ながら既にお亡くなりになられていますが御子息は内科医でカナダの医科大学の教授をされており、2010年に来日された際にお目にかかりました。
私が精神科医で、精神分析・精神力動論を専門にしており、同時に分子整合医学も実践していると話したましたところ、「素晴らしい!。そのような医師は世界的に見ても殆どいない。是非頑張って頂きたい。父エイブラム・ホッファー医師は素晴らしい治療成績をあげたけれども、サプリメントの効果だけで治療していたのではない。優れた臨床能力のある精神科医だったからこそ、あれだけの治療効果を発揮できたのだと思います」と話して下さいました。

現代のこの分野の世界的権威であるマイケル・ジャンスン先生も、御自分が教えた多くの医師たちの中で、私は初めての精神科医だと仰っていましたので、精神科医、それも力動論的精神医学を専門とする医師で、分子整合医学も治療に取り入れているのは、世界的にも見ても、極めて少数なのでしょう。

右手に精神力動論を、左手に分子整合医学を・・・いずれも医学の世界の傍流ですし、抽出したデータを出しにくいため研究者としては業績に繋がりにくい領域で、医師には余り人気がなく、私一人の歩みになってしまいましたが、臨床において、この二つの視点を持つことの大きな可能性を、信じています。

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