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D氏 1

[2011.02.19]

D氏は、某国の大使まで務めた、今では何かと風当たりの強い官僚の、エリートでした。

官僚を定年退官した後、幾つかの企業の顧問を経て、(今で言う悪評高い天下りの渡りでしょうか)

悠々自適の生活を送るはず・・・だったのですが、全ての役職を退いたのち、うつ病となりました。


私が医師になったばかりのころは、家族のため、会社のため、国のために一生懸命働いて、

引退して肩の荷が降り、これからのんびり出来る・・・

という時になってうつ病になる方が、非常に沢山いらっしゃいました。



今でこそ、うつ病と言えば社会的にも認知され、心理的抵抗も少なくなってきていますが、
当時はうつ病は勿論、あらゆる精神疾患に対する偏見が依然根強く、
患者さんにうつ病であることを受け入れて貰うことの難しい時代でした。




D氏にうつ病であることや、治療の方針、今後の予想される経過等を説明したのですが、

D氏は、毅然とした態度で私の説明を聞き、うつ病に陥ったことを静かに受け止められておられました。



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