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非定型うつ病の治療

[2010.10.13]

非定型うつ病なんて無い、とお話した講演会の席上で、
「塙は薬は必要ないと思っているのか」との御質問を頂きました。

決して薬が必要ないと言っているのではありません。
お薬の重要性は決して変わることはありません。

お薬の治療で辛い症状がすっかり改善している患者さんは、沢山いらっしゃいます。

その様な場合には、お薬だけの治療で十分です。

 

しかし、栄養障害から抑うつ状態を呈している場合には、薬を幾ら飲んでも効きにくいので、
その様な場合には、
薬による治療だけではなく、治療法を考え直すことが重要なのです。

病態改善の為に必要な栄養素を食事から取ろうとすると、

ほうれん草3kgとか、肉1.5kg、イワシ35匹・・・
途方もない量なので、普通の食事ではとても賄いきれるものではなく、
効率よく栄養補給をする手段として、サプリメントで補うことが必要と考えています。

 

若い人の憂鬱の原因の一つとして、栄養障害が考えられますが、
もうひとつ忘れてはならない原因として、背景にパーソナリテイ障害がある場合が考えられます。

パーソナリテイ障害 特にナルシシスティックパーソナリテイ障害やシゾイドタイプのパーソナリテイ障害の方の治療は、薬や栄養素の補充だけではなかなか改善が見込めません。
認知行動療法でもなかなか・・・

 

やはりパーソナリテイ障害の治療には、カウンセリング・精神分析的精神療法が必要になってきます。

薬&栄養状態・食事の改善&栄養素の補給&カウンセリング 
3つが治療の柱と考えています。

この全て行うとしたら、費用もかかりますので、3つの治療法を同時に受けられる方は非常に少ないのですが、

3つの治療を同時に試みられた勇気のある方は少数ながらいらっしゃいます。非常に満足のいく治療効果を得ることが出来ました。

非定型うつ病なんてない と私が考えるもう一つの根拠について、ご説明しましょう。

かつてのうつ病のタイプは、メランコリー親和型と呼ばれていました。
大切な人を失った、仕事や慣れ親しんだ環境を失った、
等をきっかけとしてうつ病を発症するタイプです。
メランコリー親和型の鬱病の中核症状には、悲哀感や自責感がありました。


非定型うつ病と言われる方の症状は、無気力感や疲れやすさが中心で、
悲哀感や罪責感は殆ど認められないのが特徴です。「非定型」と呼ばれる所以です。

鬱病とは、悲哀、悲しみ、失ったものへの悔み、心の痛みであるという定義に変わりはないはずです。

悲哀や抑うつを体験すると言うことは、非常に苦痛に満ちた、辛い体験で、
ある意味では、高度な精神活動の現れであるともいうことも出来るでしょう。
やる気がない、だるい 無気力、疲れ易い という症状と、憂鬱とは根本的に質の違うものです。

うつ病の中核症状が、悲哀感にあるということは、古今東西、変わりはないはずです。
うつ病の病気の中核症状が、10年位の単位で大きく変化すると言うことは、
疾病特異性からいっても、考えにくいことです。

悲哀感を欠く病態を、非定型うつ病として、うつ病の類型に分類することには無理があり、
非定型うつ病と分類不能の名前を付けて、抗うつ薬で治療することは、適切な方法ではないと考えています。

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