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A氏 5

[2011.02.12]

A氏は、診察室に入るなり、いつも私を拝み

「先生は本当にすごい人だ。先生ほど素晴らしい医師には、会ったことが無い」 と言います。

当時の私は大学を出たばかりの新米でしたし、余りに毎回毎回、何度もそう言われるので、

不思議に思い、ある日、聞いてみました。

「あなたはいつもそう言うけど、何故そう思うのですか。

私はあなたの為に特別なことは何もしていません。他の患者さんと同じにしているだけですよ。」

そう言うと、A氏は 「だから、そこが凄いんですよ」  と・・・。


「先生は、本当に私を、他の患者と全く同じに扱っている、それがよく分かる。

私らみたいな人間を、まともに見てくれる医者なんて、これまで一人もいなかったですよ。

いくらか親切にしてくれる人もいたけど、そんなもん、エセヒューマニストです。

ずっと差別を受けてきた自分らには、それがよくわかるんです。

でも、先生には、そういうものが微塵も感じられない。

ただ一患者として、他の日本人の患者と同じに扱ってくれる。

そこが凄いんです。そういう人に、私は始めて出会ったんです。」


A氏の人生の過酷さは、おそらく、私の想像をはるかに超えるものだったのでしょう。

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