F子さん 2
[2011.03.01]
うつ病が悪化すると、起き上がることも出来ないほど悪くなるのですが、
当時は介護保険も何もなかったのですが、同じアパートに住む高齢者同士が助け合っていて、
F子さんに食事を届けてくれたりしていました。
何度かうつ病が悪化し、通院も出来なくなったのですが、
同じアパートのお年寄りが薬を取りに来てくれて、治療が中断することはありませんでした。
何度かの危機的な状況はありましたが、そのたびにF子さんは見事に乗り越えて、
回復すると再び自力での通院を再開してくれました。
「F子さんが通院出来るようになることはもう無いかもしれない・・・」
「今度ばかりはもう駄目かもしれない・・・」
と、何度か内心そう思ったこともありましたが、F子さんは見事に私の心配を裏切り
「せんせー、また来たよー」と、病んで皺くちゃになった顔に何とか笑顔を作ろうとしながら
通院を続けてくれました。
こういう再会は、医師にとっても本当に嬉しいものです。
F子さんは最後まで一人暮らしを続け、子どもたちの世話になることはありませんでした。
明治の女性の潔さを教えてくれた方でした。