メニュー

育児と子どもの発達を考える会 設立までの物語

1)noblesse oblige

幼い頃から、母方の祖父はとてもノブレス・オブリージュな人だったと聞いていました。
父方の親戚は殆どが医師でしたが、母方の祖父はいくつもの事業を経営していました。

優秀だけれども貧しい若者に学費を出してやり、食べることにも窮する人に食事を与え、
祖父の家には赤貧に苦しむ人から、文人墨客はもとより、高貴な身分の方まで、多彩な人々が集っていたと言います。

 

関東大震災の折、働き手を失って途方に暮れる祖父の会社の社員たちの遺族に、当時は保険も何もなかったので、
私財を投げ打って残された家族に家と生涯困らないだけの生活を保証してやり、その為祖父の莫大な財力は大きく傾き、
更に戦後は長いこと公職追放となり、失意のまま私が生まれる前に亡くなったと聞いています。

祖父と同時期に起業した友人たちの会社が日本を代表する老舗企業に成長していく姿を目の当たりにし、
無念だったことと思いますが、私は一度も会ったことはないけれども、祖父の生き方を人生の手本とし、
誇りに思いながら成長しました。

 

大学を卒業し医師となった時、先輩医師でもある父からは、こう言われました。
「お金を人生の目標にしてはいけない。一生懸命患者さんの為に仕事をしていれば、お金は後からついてくるものだ」

2)精神分析学&乳幼児精神医学の巨人たちとの出会い

医師となり大学病院に勤務し、臨床を実践するうちに、精神科臨床の最良の治療論である精神分析学の知識の必要性を痛感しましたが、
精神分析学を理解できる医師は周囲に一人もいませんでした。

大学に所属しながら別の大学の教官に師事することは許されませんでしたので、仕方なく
当時勤務していた大学病院を退職し、開業して自由の身となり、日本の精神分析学の創始者の一人である小此木啓吾先生に師事しました。

収入は大幅に減り、借金をしながら勉強しましたが、小此木先生の元で学ぶことが楽しくて仕方なく、少しも後悔することはありませんでした。

 

小此木先生には親身に指導頂き、世界中の国際学会に同行させて頂いて、精神分析学の歴史を築いた知の巨人たちと身近に接する機会に恵まれたことは、幸運でした。

特に乳幼児精神医学を築いたセルジオ・レボビュッシュ、アニー・バーグマン、ダニエル・スターン等との出会いは、人の心の成り立ちや乳幼児の心理的発達に目を向ける貴重な体験となりました。

3)分子整合医学との出会い

一方、1990年代から夢の新薬と喧伝された薬が次々と発売され、精神医療は薬物治療に大きくシフトして行きました。

私自身、海外の文献で夢の新薬の効果を見聞きしておりましたので、新薬の発売を心待ちにしており、数年間はかなり積極的に使っていました。

私を担当していた製薬会社の営業マンが、私の担当をした途端にトップセールスマンに躍り出て、会社から表彰されたり、
会社からヨーロッパにある本社訪問研修旅行に招待されたりして、おそらく日本で最も新薬を使った一人だったと思います。

 

問題もありました。

古い薬が1錠10円位だったのに比べ、新薬の価格はかつての発売時、300円以上と、一気に数十倍に高騰したのです。
当時、アメリカでは同じ薬が10ドルくらいでしたので、発売前には、おそらく日本でもそのくらいの金額、
つまり100円から150円位の薬価になるだろうと、想定されていました。

蓋を開けてみると当時の正確な薬価は覚えていませんが、想定金額の3倍近くで、あまりの高さに驚きました。
当時、既に製薬会社の力は相当なものに拡大していたのでしょう。


更に、夢の新薬により解決されるはずだった精神疾患の改善効果は、期待したほどではなく、
効果は横ばい、場合によっては安い古くからある薬の方が効果のある場合すらありました。

最も深刻だったのは、アクテイベイトという重篤な副作用が少なくないということです。
特に若い人では、自殺のリスクが高くなると言う深刻な副作用が明らかとなっていきました。

 

薬物治療に限界と疑問を感じていた頃に、オーソモレキュラー療法、人の生体内に存在する栄養素のインバランスに注目し、
不足している栄養素をサプリメントで積極的に補うことによって、精神疾患を治療しようとする栄養療法、
オーソモレキュラー療法:分子整合医学に出会いました。

実践してみると、その効果は予想以上に優れたものでした。
私も驚いたけれど、誰よりも驚いたのは、患者さんたちご本人でした。

 

2008年まで東京みゆきクリニック、名古屋はなわクリニックとふたつのクリニックを運営していましたが、
同年秋に名古屋のはなわクリニックを譲渡し、東京みゆきクリニックだけに専念するようになり
徐々に薬物治療を減らし、オーソモレキュラー療法、医療用サプリメントを使った治療法に切り替えていきましたが、
最初は、まったく理解されず、再び年収は暴落し3分の1に減りましたが、

しかし栄養療法の本質的な効果を実感してみると、どうしても薬物治療に戻る気にはなれませんでした。

 

日本の医療は健康保険制度のもと薬物治療が中心であり、子どもといえども薬物が処方されます。

薬物は疾患によっては非常に有効であり、決して薬物治療を否定するものではありませんが、
薬の必要のない、あるいは薬の効果が期待出来ないケースにまで、薬が安易に処方されていることが問題だと考えています。

 

残念なことに、殆どの医師は、精神分析学も乳幼児の心理的発達論も栄養学も、知りません。
教えられる教官が医学部にいないのです。
医学部で学ばないので、栄養や心理的発達論を知らない医師が殆どなのです。

私は精神分析といい、栄養療法といい、人のやろうとしない医学の傍流にばかり興味を持つようです。
しかしそこに真実があると信じているので、迷いはありませんでした。

実際にこの栄養療法を行いながら同時に精神分析的カウンセリングを実施してみると、
治療困難と思えた患者さんたちも、別人の様に良くなるケースがたくさん出てきました。

4)noblesse oblige 精神分析的発達論 分子整合医学 の統合

急増する発達障害児の中には、ビタミンやミネラルの不足から問題行動を起こしている例が数多く含まれています。

多動や容易にパニックして大騒ぎする傾向の為に、学校で厄介者扱いされ、毎日怒られてばかり、自尊心も傷つき、
「どうせ自分は何をやってもダメなんだ」と心が傷つき、拗ねてしまい、ますます扱いにくい子どもになりがちです。

パニックしやすい子どもに必要なのは、薬ではなく、
パニック時の気持ちを共感的に受け止め、怒りや混乱を自ら抱えられるように支え、
不足する亜鉛や鉄やオメガ3系脂肪酸やビタミンB群を補充するサプリメントを処方することです。

 

育児拒否、育児放棄、子供への虐待、ネグレクト、時に自殺衝動は、貯蔵鉄量の減少により増悪する場合があり
適切な栄養素の補充で改善できることにも気づきました。

  1. noblesse oblige
  2. 精神分析的心理発達論 
  3. 分子整合医学 

この3つが一般社団法人育児と子どもの発達を考える会の基礎です。

一般社団法人育児と子どもの発達を考える会は、皆様からの寄付で運営されます。

会の趣旨にご賛同頂けます方がいらっしゃいましたら、ご協力を賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

 

一般社団法人育児と子どもの発達を考える会 代表理事 

塙 美由貴

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME