どうやって病名をつけるのでしょう 9
摂食障害と言っても、病態水準によって、その病理は様々です。
数年前、イギリスのBBC放送が、摂食障害の治療を実践している
イギリスのある診療所の治療プログラムを紹介していたので、興味深く見てみました。
豪華な邸宅を診療所にしたもので、入院設備を備えており、摂食障害の少女たちは、
そこで生活しながら認知行動療法的な考え方に基づく治療プログラムを受けていました。
熱心な医師とカウンセラーが治療にあたっていましたが、
善意ではあるのだけれども、幾つか問題点が垣間見えました。
例えば、入院しているにも関わらず体重が減ってしまうと、
スタッフに隠れて食べ物を吐き出しているのだろうということで、
高カロリーのピーナツバター等を食べさせて、体重を増やそうとします。
このような治療アプローチは2つの点で問題があります。
ひとつには、処罰的な方法では、人格の病理の改善には無力であること、
ふたつめには、ピーナツバターの様な糖質の多い食品は、
インスリン感受性を低下させ、血糖値の急激な上下を招き
摂食障害の生体内の生化学的な反応には好ましくないことです。
ロンドンには、フロイト以後の精神分析の2大潮流を担った
アンナ・フロイトとメラニー・クラインの研究所があり、
イギリスは優れた精神分析家を数多く輩出している精神分析の中心地ですが、
そのイギリスの精神科医療ですら、必ずしも精神分析の知が生かされている
わけではないことに、少なからずショックを受けたことを覚えています。