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ホバリング C子さん

[2024.09.30]

大学病院勤務時代、大学から派遣されて週2日勤務していた病院でのことです。

当時40代後半だったC子さん
重症の双極性障害Ⅰ型で、精神病院に入院してきましたが、余りに症状が激しいので、やむを得ず、保護室へ入れることにしました。

保護室と言うのは、非常に精神症状が重くて、一般病棟に置いておくのが危険な場合、症状が落ち着くまで一時的に入って頂く個室のことです。


自傷の危険があるので、布団がひと組あるだけの、四角い何もない部屋です。

ある日、C子さんの様子を見に保護室を訪れた私は、そこで信じられないことに遭遇しました。
確かに保護室にいるはずのC子さんが、いないのです!


えっ、C子さんがいない!? 外には出られないはずなのに・・・?


そして・・・更に信じられない光景を見たのです。
何と、C子さんは保護室の天井に、ヤモリのようにへばりついていたのです!。

天井は平らな平面で、つかまるようなところは何もありません。
壁もまったく平らな平面で、窓もなければ、サンもありません。


C子さんはパジャマ以外、身に着けていたものは何もありません。
手袋も吸盤も何もありません。素手です。

素手で天井にへばりついている人間を見たときの驚きと言ったら・・・


そんな重力に逆らうようなことが可能なはずはない・・・のですが、確かにこの目で見たのです。
一緒にいた看護婦も仰天していました。

後から、落ち着きを取り戻したC子さんに聞いたところによると、布団を縦にしてその上に登り、
手で天井によじ登ったと言っていました。

ホバリングと言う競技では、本当に素手で壁を登るのだそうですが、名人になるとまるで影がゆらゆら揺れているように、しなやかに素手で壁を登っていくそうです。

C子さんはホバリングの経験は無かったはずですが、もし彼女がホバリングをしていたら、世界選手権に出られたかも知れません・・・。

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