信頼関係
コロナ渦の時は、何か患者さん達との距離が縮まった感じがしました。
いつも通院してきて下さっている患者さんが来ないと、どうしているのかな、と気になったり
患者さんが元気な顔を見せてくれると、つい嬉しくて、「あーよく来てくれたねー」と言ったりします。
通常、医師は、よく来てくれた、と思っても、それを言葉にすることはありません。
医師の態度には「中立性」というものが大切で、「いらっしゃいませー」「ようこそ!」 的な態度は取らないのです。
なので、患者さんによっては、冷たいと感じることがあるかも知れません。
もし、そういう、いらっしゃいませ、ようこそ、という態度の医師がいたら、むしろ問題です。
(最近は、医療機関も、マーケティングやコンサルタントの業者さんと提携しているところが増えて、
そのような態度をとる医師が増え、そういう医師のクリニックは大盛況しているようですが、
これは実は、医療の質を考えた時に、深刻な問題をはらんでいるのですが、そのことはまた、後日書きましょう。)
コロナの様な状況下では、普段とは事情が異なります。
本当に無事でいることを、お互いに喜びあう、そういうことがとても自然な態度になりますね。
中立性は大事ですが、自然な態度まで否定するものでありません。
患者さんが元気な顔を見せてくれると、本当に嬉しい。
微熱があるから来院出来ない、と電話がくると、大丈夫かな、と本気で心配します。
来院してくれた患者さんが、私と話をして
「ほっとしましたあ、先生と話せて良かった」
「ここが診療していてくれて、助かります」
と言って下さると、普段より、数倍、お役に立てているのかな、と感じます。
みゆきクリニックに通っている患者さん達は、思いの外、皆さん、落ち着いていらっしゃいます。
世間では「コロナ鬱」とかいろいろ言われていますが、みゆきクリニックに関しては、余り悪化する人がいないのは、
医師として本当に有り難いし、普段からの信頼関係がどれだけ大切かを、改めて思います。
信頼関係って、時間をかけて作り上げるものですよね。
信頼関係は文化によっても良しとする基準が違ってくるように思いますが、
例えば京都では、
なじみの客と、一見さんでは、扱いが全然違います。
一方東京では、
なじみの客も一見さんも、表向きは区別しないことを良しとするような印象があります。
こんなことがありました。
ある時、外国からのVIPのお客様を京都に案内することになり、
京都の料亭に予約の相談をしました。
何年もの間、親しくしていた料理人さんの店です。
その店は、予約を1ヶ月前から受け付けるシステムですが、私が電話をしたのは半年くらい前です。
「そんな、たいそうなお客はん、連れて来られたら、緊張しますわあ」
と言いながらも、快く、予約を受けて下さいました。
また別のある時、別のVIPのお客様を東京の料理屋にご案内することになり、予約の相談をしました。
こちらはもう何十年も通っている店です。
ここも、1ヶ月前から予約を受け付けるシステムです。
私が名乗ると、「塙様、いつもありがとうございます。」と、丁重に対応してくれましたが、
予約を受け付けるのは1ヶ月前からなので、1ヶ月前に電話をかけ直してほしいと、丁重に言われました。
これはどちらも正解です。
言うならば文化の違いでしょうか。
どちらが好みかは別として、
100回会った人と、今日初めて会った人を、同一に扱うのがフェアである、とするのは、果たして現実的でしょうか。
京都スタイルは確かに厭らしい側面もあるけど、現実的です。
みゆきクリニックでは、2011年の震災の時も、患者さんが減ることはありませんでしたが、
コロナ渦の時も、新患の患者さんは確かに減りましたが、
従来から通ってきて下さっている患者さんは、変わりなく、通院して下さいました。
感染予防に気をつけながら、患者さんの方が
「先生、倒れないでね」と私をねぎらって下さいます。
患者さん達に信頼して頂いていること、危機の時こそ、普段から時間をかけて築いてきた信頼関係の大切さを
改めて実感させて頂きました。
信頼関係は、一朝一夕には作りあげられない、時間をかけて、双方で作り上げるものですね。
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