育児ストレス評価尺度
周産期メンタルヘルス学会で発表しました。
演者 みゆきクリニック 塙 美由貴
共同演者 高橋幸子 松井豊 筑波大学人間総合研究科
目的】
従来、産後うつ病は体内ホルモン動態の急激な変化によるものであり、出産後数か月以内に発症すると言われてきた。しかし近年、筆者の医療施設では産後半年以上、場合によっては数年も経過した後にうつ状態を訴えて来院する患者が増加している。患者の特徴として,育児関連ストレスを抱える傾向が挙げられる。育児中は,育児関連ストレスが母親の抑うつ重症度に影響するというネガティブな側面が指摘されているが(e.g. 佐藤他, 1994),同時に,育児幸福感を感じるというポジティブな側面の指摘もある(清水・伊勢, 2008)。そこで本研究は,育児に対するネガティブ・ポジティブの両反応を同時に測定できる尺度を開発する事を目的とする。
【方法】
2016年1月下旬の2日間に,ネットリサーチ会社に依頼して,関東在住かつ12歳以下のお子さんを持ち,予備募集に応募してきた女性413名(20歳代57名,30歳代225名,40歳代が131名)を対象とした調査を行った。先行研究を参考に,育児に対するポジティブな反応を表す9項目と,ネガティブな反応を表す15項目を作成した。
【結果及び考察】
計24項目に関する因子分析(バリマックス法)を行った。固有値の減衰状況(9.88,2.94,1.31 ...)から2因子が妥当であると判断した。第1因子はネガティブ反応15項目であり,第2因子はポジティブ反応9項目であった。信頼性係数は,α=.934であった。
この結果から本研究は,育児関連ストレスに伴うネガティブ反応15項目と,ポジティブ反応9項目からなる育児関連ストレス尺度を開発した。これまでの育児関連ストレスは,育児のネガティブな側面によってのみ検討されることが多かった。しかし今回,育児のポジティブな側面も同時に扱う尺度を開発したことで,育児への両影響が拮抗した結果としての育児関連ストレスを扱うことが可能となった。
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